人材開発支援助成金「定額制訓練」で日本語のeラーニングは対象になるか——支給要領で確認する条件
日常会話程度の語学の習得だけを目的とする日本語のeラーニングは、厚生労働省の支給要領では助成対象外です。支給要領は、助成対象とならない「趣味教養を身につけることを目的とするもの」の例としてこれを挙げています。定額制訓練で対象になるのは、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる「職務関連教育訓練」に限られ、修了した訓練の標準学習時間が10時間以上であることも条件です。どの日本語講座が職務関連教育訓練に当たるかを支給要領は名指ししていません。そのため、計画届とカリキュラムで判断されることを踏まえ、提出前に管轄の労働局へ確認してください。
執筆:United World Nihongo 編集部 / 公開日:2026年10月5日 / 出典:厚生労働省「12 人材開発支援助成金(5)人への投資促進コース」支給要領(令和8年8月3日版)、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」 / 確認日:2026年9月1日
支給要領における「定額制サービス」と「eラーニング」の定義
定額制訓練は、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」にある5つのメニューの一つです。このコースは令和4~8年度の期間限定の助成とされています。
令和4~8年度の期間限定助成として「人への投資促進コース」による助成を行っています。
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」
支給要領では、定額制サービスを次のように定義しています。
定額制サービス 一訓練当たりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受けられる e ラーニング及び同時双方向型の通信訓練で実施されるサービスのことをいう。
厚生労働省「12 人材開発支援助成金(5)人への投資促進コース」支給要領(令和8年8月3日版)
ここでいうeラーニングには、学習管理システム(LMS)などで訓練の進み具合を管理できることが含まれます。
e ラーニング コンピュータなど情報通信技術を活用した遠隔講習であって、訓練等の受講管理のためのシステム(Learning Management System.以下「LMS」という。)等により、訓練等の進捗管理が行えるものをいう(同時双方向型の通信訓練を除く。)。
厚生労働省「12 人材開発支援助成金(5)人への投資促進コース」支給要領(令和8年8月3日版)
日本語の学習アプリや動画サービスを検討する場合は、まず、そのサービスがこの2つの定義に当てはまるかを確かめる必要があります。
日常会話程度の日本語は「趣味教養」として対象外
支給要領の「OFF-JTのうち助成対象とならないもの」の表には、語学について次の記載があります。
趣味教養を身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室 等)
厚生労働省「12 人材開発支援助成金(5)人への投資促進コース」支給要領(令和8年8月3日版)
同じ表には、日本語研修の設計に関係する項目がほかにもあります。
| 助成対象とならないもの | 支給要領の記載 |
|---|---|
| 職務に直接関連しない教育訓練 | 職業又は職務に間接的に必要となる知識及び技能を習得させる内容のもの |
| 職業人として共通に必要なもの | 職業又は職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの(例:接遇・マナー講習等社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習 等) |
| 趣味教養 | 趣味教養を身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室 等) |
支給要領の文言は「日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習」です。職務に関連する内容を含む日本語講座の扱いについては、個別の記載がありません。また、敬語やビジネスマナーを中心とする日本語講座は、2行目の「接遇・マナー講習等」との関係を確認する必要があります。
日本語講座が職務関連教育訓練かどうかの判断方法
計画届とカリキュラムで判断され、難しい場合は事業主から聴き取る
助成対象かどうかの判断方法について、支給要領は次のように書いています。
「職業訓練実施計画届」(様式第1-1)の記載事項及び訓練カリキュラム等により判断することになるが、仮に判断が難しい場合には、本人の職務内容と教育訓練の内容との関連性等について事業主より聴取すること等により、具体的状況の把握に努めることとなる。状況把握した上で、不合理な点が認められない場合に、助成対象とすることを原則とする。
厚生労働省「12 人材開発支援助成金(5)人への投資促進コース」支給要領(令和8年8月3日版)
つまり企業が準備するのは、対象となる外国籍社員の職務内容と、受講させる日本語講座の内容とのつながりを、計画届とカリキュラムで説明できる状態にしておくことです。説明できるかどうかの最終判断は労働局が行います。
対象外の講座が含まれるサービスの扱い
定額制サービスに支給対象外の講座が含まれていても、対象労働者の職務関連教育訓練の受講時間の合計が要件を満たしていれば、支給対象訓練になります。ただし、サービス全体の講座数のうち支給対象外講座が5割以上を占める場合は、支給対象になりません。日常会話の講座が大半を占める日本語サービスでは、この割合を講座一覧で確認する必要があります。
カリキュラムの一部に助成対象外の訓練の時間が含まれる場合、その時間は10時間要件の時間数に算入されません。日常会話の講座を受講した時間は、職務関連教育訓練の受講時間とは別に数えることになります。
対象外の部分の経費
支給対象訓練と支給対象外訓練を分けて契約できるのに、支給対象外訓練の経費まで含めて契約した場合、その部分の経費は支給対象になりません。
日本語の講座かどうかに関係なく満たすべき要件
次の要件は、日本語以外の講座にも共通して支給要領に書かれています。
| 要件 | 支給要領の内容 |
|---|---|
| 訓練の形態 | OFF-JTであり、教育訓練機関に委託して行う事業外訓練であること |
| 対象労働者 | 定額制サービスに含まれる職務関連教育訓練を修了し、修了した訓練の標準学習時間が10時間以上であること |
| 受講中の賃金 | 業務上義務付けられ、労働時間に該当するため、受講中も賃金の支払いが必要。所定労働時間外に受講した場合も同じで、受講時間中の賃金を適正に支払っていない場合は支給対象と認められない |
| 訓練の実施期間 | 1年以内であること |
| 教育訓練機関の情報掲載 | 計画届の提出日時点で、訓練の概要・連絡先・申込みや資料請求ができることを自社ホームページに掲載していない民間の教育訓練機関の訓練は、支給対象にならない |
| 受講回数 | 同一事業主・同一労働者について1年度あたり、定額制訓練・自発的職業能力開発訓練・事業展開等リスキリング支援コースを合わせて3回まで |
日本語学習を就業時間外の自習として任せている企業は、賃金の扱いを特に確認してください。助成の対象にするなら、所定労働時間外の受講時間にも賃金の支払いが必要になります。
助成率と限度額
定額制訓練の経費助成率は次のとおりです。
| 企業規模 | 経費助成率 | 賃金要件または資格等手当要件を満たした場合の割増分 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 60% | 15% |
| 大企業 | 45% | 15% |
経費助成の限度額は、1人につき1か月あたり2万円です。また、人への投資促進コース(成長分野等人材訓練を除く)の支給額は、1事業所1年度あたり2,500万円が上限です。いずれも出典は厚生労働省の支給要領(令和8年8月3日版)です。
計画届から支給申請までの期限
| 手続き | 支給要領の定め |
|---|---|
| 職業訓練実施計画届の提出 | 定額制サービスの契約期間の初日の6か月前から1か月前までの間 |
| 計画届の添付書類 | 訓練の実施目的、実施内容、契約期間、講座の一覧、講座ごとの標準学習時間または標準学習期間、LMS等で進捗管理を行える機能があること(eラーニングの場合)、受講料(料金体系)が分かる訓練カリキュラム・受講案内など |
| 訓練の実施期間 | 1年以内 |
| 支給申請 | 計画届に記載した「訓練の実施期間」の最終日の翌日から2か月以内 |
添付書類には講座の一覧と講座ごとの標準学習時間が含まれます。日本語サービスのうちどの講座を職務関連教育訓練として受講させるかは、契約前に整理しておく必要があります。
この記事の支給要領は、職業訓練実施計画届の提出日が令和8年8月3日以降のものに適用される版です。提出時点で版が変わっていないかも確認してください。
確認先と、この記事では判断できないこと
個々の日本語講座が職務関連教育訓練に当たるかどうかは、支給要領に個別の記載がありません。計画届の提出前に、管轄の都道府県労働局へ確認してください。契約や労務の扱いに関する法的な判断は、弁護士の領分です。
人への投資促進コースは令和4~8年度の期間限定とされています。令和9年度以降の扱いは、この記事で用いた資料からは分かりません。
United World は認定日本語教育機関ではありません。当社の研修が定額制訓練その他の助成金の要件を満たすとは申し上げられません。当社がお手伝いできるのは、外国籍社員が業務で使う日本語を洗い出し、研修の目的と内容を整理するところまでです。
よくある質問
日常会話レベルの日本語eラーニングは定額制訓練の対象になりますか
日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習は対象になりません。支給要領は、助成対象とならない「趣味教養を身につけることを目的とするもの」の例としてこれを挙げています。
業務で使う日本語を学ぶeラーニングなら対象になりますか
支給要領は、日本語講座を個別に対象と定めていません。職務関連教育訓練に当たるかは計画届の記載事項と訓練カリキュラムで判断され、判断が難しい場合は職務内容との関連を事業主から聴き取るとされています。計画届の提出前に管轄の労働局へ確認してください。
定額制サービスに日常会話の講座が含まれていても使えますか
支給対象外の講座が含まれていても、対象労働者の職務関連教育訓練の受講時間の合計が要件を満たせば支給対象訓練になります。ただし、サービス全体の講座数のうち支給対象外講座が5割以上を占める場合は対象外です。
外国籍社員が勤務時間外に日本語eラーニングを受講した場合はどうなりますか
定額制訓練の支給対象訓練は業務上義務付けられ、労働時間に該当します。そのため、所定労働時間外に受講した時間にも賃金の支払いが必要です。受講時間中の賃金を適正に支払っていない場合は支給対象と認められません。
定額制訓練の職業訓練実施計画届はいつ提出しますか
職業訓練実施計画届は、定額制サービスの契約期間の初日の6か月前から1か月前までの間に提出します。支給申請は、計画届に記載した訓練の実施期間の最終日の翌日から2か月以内です。