外国人雇用管理アドバイザーとは——ハローワークに無料で相談できることと、日本語研修の前に確認すること
外国人雇用管理アドバイザーは、国が委嘱した専門家が、外国人労働者の雇用管理や職業生活上の問題について、事業所ごとの実態に応じて相談に応じる制度です。厚生労働省は、無料で相談・支援を受けられると案内しており、申し込み先はハローワークです。相談の前に、言葉が原因で問題が起きている場面と、残っている記録を整理しておくと、雇用管理で解くべき課題と日本語研修で解くべき課題を分けやすくなります。
執筆: United World Nihongo 編集部 / 公開日: 2026年10月2日 / 出典: 厚生労働省「外国人を雇用する事業主への支援について」、宮城労働局・埼玉労働局・福岡労働局の外国人雇用管理アドバイザーの案内 / 確認日: 2026年10月2日
外国人雇用管理アドバイザー制度の概要
宮城労働局は、この制度を次のように説明しています。
国が専門的な知識や経験を有するアドバイザーを委嘱し、外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題等について、各事業所の実態に応じた相談を行う制度
厚生労働省も、外国人を雇用する事業主への支援の一つとして、雇用管理や職業生活上の問題について無料で相談・支援を受けられると案内しています。
誰がアドバイザーを務めるのか
福岡労働局は、専門的な知識を持つ社会保険労務士と行政書士を外国人雇用管理アドバイザーとして委嘱していると案内しています。雇用管理に関する相談には、社会保険労務士が事業所を訪問して対応するとされています。ほかの労働局でどのような専門家が委嘱されているかは、今回確認した範囲では各ページに明記されていませんでした。管轄の労働局の案内で確認してください。
相談の受け方
宮城労働局の案内では、訪問日程を調整したうえでアドバイザーを事業所に派遣し、相談は無料です。事業所に来てもらえるため、実際に問題が起きている現場を見たうえで助言を受けられる可能性があります。ただし、運用の細部は労働局ごとに案内が異なります。
申し込み先
申し込み先はハローワークです。埼玉労働局は、最寄りのハローワークのほか、埼玉労働局職業安定部職業対策課でも申し込みを受け付けると案内しています。
相談できることの例——言葉が関わる問題も含まれる
労働局の案内には、具体的な相談例が載っています。そのうち、言葉や習慣の違いが関わるものを抜き出すと次のとおりです。
| 相談例(労働局の案内より) | 掲載している労働局 |
|---|---|
| 外国人労働者に対する業務上の指示がうまくいかない | 宮城労働局 |
| 労働条件等について外国人労働者の理解が得られない | 宮城労働局 |
| 生活習慣の違いから事業所内でトラブルが発生することが多い | 宮城労働局 |
| 日本語に不慣れな外国人労働者への職場教育の方法 | 埼玉労働局 |
「指示が伝わらない」「日本語に不慣れな社員にどう教えるか」は、日本語研修の相談として持ち込まれることが多い悩みです。しかし労働局の案内では、こうした悩みも雇用管理の問題として、アドバイザーに相談できる例に挙げられています。言葉の問題に見えても、まず雇用管理の側から見直せる部分がある、ということです。
相談の前に整理して持ち込むもの
今回確認した労働局の案内には、相談の前に準備するものの指定は見当たりませんでした。以下は、限られた相談の時間を具体的な助言につなげるための、編集部からの提案です。
言葉が原因で問題が起きている場面
「日本語が通じない」とまとめず、場面ごとに分けて書き出します。たとえば、朝礼での口頭の指示、作業手順書の読み取り、電話の取り次ぎ、安全に関わる声かけ、労働条件や就業規則の説明などです。どの場面で、誰から誰への伝達がうまくいかなかったのかが分かれば、アドバイザーは指示の出し方や説明の方法を具体的に検討できます。
残っている記録
指示の行き違いによる作業のやり直し、ヒヤリハットの報告、本人との面談記録、労働条件を説明したときの書面と、それを何語で誰が説明したかといった記録です。記録が無い場合は、無いこと自体が分かるだけでも、次に何を残すべきかの助言を受ける手がかりになります。
これまでに試した対応
やさしい日本語での言い換え、母語の分かる社員による通訳、図や写真を使った手順書などは、すでに試した対応があれば、その結果と一緒に伝えます。試してうまくいかなかったことも、原因を切り分ける材料になります。
アドバイザーに相談すること、日本語研修で扱うこと
言葉が関わる問題には、伝える側の仕組みで解けるものと、本人の日本語の力を伸ばさないと解けないものが混ざっています。編集部では、次のように分けて考えることをおすすめしています。
| 起きていること | 先に見直すこと | 日本語研修で扱えること |
|---|---|---|
| 労働条件の説明が理解されていない | 説明の方法や書面の作り方。アドバイザーへの相談の対象になる | 説明を聞くための語彙や、分からないときに質問する表現 |
| 業務上の指示が伝わらない | 指示の出し方、確認の手順、手順書の書き方 | 現場で使う語彙、指示の聞き取り、復唱と報告の練習 |
| 生活習慣の違いからトラブルが起きる | 職場のルールの示し方や相談の受け方。アドバイザーへの相談の対象になる | ルールを説明する文書を読む力、困りごとを伝える表現 |
| 職場教育が進まない | 教える側の体制や教材の作り方 | 教育で使われる日本語そのものの習得 |
伝える側の仕組みが整っていないまま研修だけを行っても、現場の問題が残ることがあります。逆に、仕組みを整えても伝わらない場面が残るなら、そこが日本語研修で扱うべき範囲です。先にアドバイザーと雇用管理の課題を整理しておくと、研修の目的と対象の場面を絞り込めます。
なお、労働条件や在留資格に関わる個別の判断は、社会保険労務士・行政書士・弁護士などの専門家の領分です。当社は日本語研修を提供する立場であり、法的な判断はできません。
よくある質問
外国人雇用管理アドバイザーへの相談に費用はかかりますか?
厚生労働省は、外国人雇用管理アドバイザーに外国人労働者の雇用管理などについて無料で相談・支援を受けられると案内しています。宮城労働局の案内でも、相談は無料とされています。
外国人雇用管理アドバイザーにはどこに申し込めばよいですか?
外国人雇用管理アドバイザーの申し込み先はハローワークです。埼玉労働局のように、最寄りのハローワークのほか労働局の担当課でも受け付けると案内している例があるため、管轄の労働局の案内を確認してください。
外国人雇用管理アドバイザーは事業所に来てくれますか?
宮城労働局は訪問日程を調整してアドバイザーを派遣すると案内し、福岡労働局は社会保険労務士が事業所訪問で対応すると案内しています。対応の方法は管轄の労働局の案内で確認してください。
日本語が原因の問題も外国人雇用管理アドバイザーに相談できますか?
労働局の相談例には、業務上の指示がうまく伝わらない場合や、日本語に不慣れな外国人労働者への職場教育の方法が含まれています。言葉が関わる問題でも、雇用管理の問題として相談できます。
外国人雇用管理アドバイザーへの相談の前に何を準備すればよいですか?
今回確認した労働局の案内には、事前に準備するものの指定は見当たりませんでした。編集部としては、言葉が原因で問題が起きた場面、その記録、これまで試した対応を整理して持ち込むことをおすすめします。
アドバイザーへの相談と日本語研修はどちらを先にすべきですか?
編集部の考えでは、指示の出し方や労働条件の説明など雇用管理で解ける問題が残っていないかを先にアドバイザーに相談し、そのうえで日本語の力が原因として残る場面を研修で扱うと、研修の目的を絞りやすくなります。