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外国籍社員の入社90日にすることは、指針にほぼ書かれている

外国籍社員の受け入れで企業が何をすべきかは、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年8月3日厚生労働省告示第276号、直近改正 令和8年5月29日告示第227号)に列挙されています。読むときに大事なのは、条文の語尾です。指針は「行うこと」と「努めること」を書き分けており、前者は解釈の余地が狭く、後者は努力義務です。入社直後に効くもののうち、語尾が「行うこと」なのは安全衛生教育を理解できる方法で実施することであり、日本語学習の支援や母国語での導入研修は「努めること」に置かれています。この線引きを先に把握しておくと、90日の設計で何を落とせないかがはっきりします。

執筆:United World 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)/公開 2026年9月1日
本記事の条文はすべて厚生労働省の一次情報に基づきます。出典:厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(告示第276号)(確認日 2026年9月1日)。指針は改正されます。実務判断の前に必ず出典先の最新版をご確認ください。

語尾で分かれる、義務と努力義務

指針の第四に定められた事項のうち、入社前後に関係するものを語尾で分類しました。「してはならない」「行うこと」は言い切り、「努めること」は努力義務です。

指針の箇所内容語尾
第四 一 2在留資格上その業務に従事することが認められない者を採用しないこと採用してはならない
第四 二 1国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いしてはならない
第四 二 2 イ賃金・労働時間等の主要な労働条件を明らかにした書面の交付交付すること
第四 二 2 イその書面を母国語等、本人が理解できる方法で明示すること努めること
第四 二 2 ロ税金・雇用保険・社会保険料・控除を含め、実際の支給額が分かるよう説明すること努めること
第四 二 5就業規則・労使協定等の周知周知すること
第四 二 5その周知を多言語資料や母国語等で理解できるようにすること努めること
第四 二 7旅券・在留カード等を保管しないこと保管しないようにすること
第四 三 1安全衛生教育を、母国語等・視聴覚教材等、本人が内容を理解できる方法で行うこと行うこと
第四 三 2労働災害防止の指示等を理解できるよう、必要な日本語および基本的な合図等を習得させること努めること
第四 三 3労働災害防止の標識・掲示を図解等で理解できるようにすること努めること
第四 五 1社内規程その他文書の多言語化等、円滑なコミュニケーションの前提となる環境整備努めること
第四 五 2日本語教育および生活習慣・文化・風習・雇用慣行の理解を深める支援、日本語学習の機会の提供努めること
第四 五 3苦情・相談を受け付ける窓口の設置等の体制整備努めること
第四 五 4日本語能力に配慮した教育訓練、母国語での導入研修の実施等努めること

出典:同指針 第四(確認日 2026年9月1日)。表は入社前後に関係する条項のみを抜粋しており、指針の全体ではありません。

入社直後にとくに効く3つの条項

1. 安全衛生教育は「理解できる方法により行うこと」

指針のなかで日本語に関わる条項はおおむね努力義務ですが、安全衛生教育は違います。

事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより外国人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。特に、外国人労働者に使用させる機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱方法等が確実に理解されるよう留意すること。

厚生労働省告示第276号 第四 三 1

「実施すること」ではなく「理解できる方法により行うこと」と書かれている点が実務上の分かれ目です。日本語の資料を配って読ませただけでは、条文が求める形にならない可能性があります。とくに機械や原材料の危険性については「確実に理解されるよう留意すること」と重ねて書かれています。入社90日のうち、最初に確定させるべきはここです。

2. 日本語が名指しされているのは、労働災害防止の文脈

指針で「日本語」を事業主に求めている条項は2か所あります。ひとつは安全に関するものです。

事業主は、外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語及び基本的な合図等を習得させるよう努めること。

厚生労働省告示第276号 第四 三 2

もうひとつは生活支援の文脈で、日本語教育の推進に関する法律(令和元年法律第48号)の基本理念にのっとり、雇用する外国人労働者とその家族に対する日本語学習の機会の提供その他の日本語学習に関する支援に努めること、と定められています。前者は「必要な日本語及び基本的な合図」、後者は「日本語学習の機会」。求められている水準が違うので、研修を設計するときは、この2つを1つの施策で兼ねようとしないほうが整理しやすくなります。

3. 賃金は「実際に支給する額」まで説明する

労働条件の明示は書面交付が言い切りですが、賃金についてはもう一段踏み込んだ記述があります。

事業主は、賃金について明示する際には、賃金の決定、計算及び支払の方法等はもとより、これに関連する事項として税金、雇用保険及び社会保険の保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについても、母国語等を用いる等、外国人労働者が理解できるよう説明し、当該外国人労働者に実際に支給する額が明らかとなるよう努めること。

厚生労働省告示第276号 第四 二 2 ロ

額面と手取りの差は、入社直後の不信につながりやすい項目です。指針はここを努力義務としながら、控除の内訳まで具体的に列挙しています。

90日をどう区切るか

指針は時期を定めていません。以下は、条項の性質から逆算した区切り方です。制度上の期限ではなく、設計の目安としてお読みください。

入社日まで

在留資格の確認(第四 一 2)は採用の前提条件です。労働条件通知書の交付と、その内容を理解できる形での説明(第四 二 2 イ)もここに入ります。旅券や在留カードを会社が預からない運用(第四 二 7)を、この時点で決めておきます。

最初の30日

安全衛生教育を、理解できる方法で実施します(第四 三 1)。就業規則・労使協定の周知(第四 二 5)と、賃金の控除内訳の説明(第四 二 2 ロ)もこの期間です。相談窓口を誰にするかを本人に伝えます(第四 五 3)。

30日から90日

社内規程や業務文書の多言語化、あるいは平易な日本語への置き換えを進めます(第四 五 1)。日本語能力に配慮した教育訓練(第四 五 4)と、日本語学習の機会の提供(第四 五 2)を検討するのはこの段階です。最初の30日に日本語研修を詰め込むより、安全と労働条件の理解を先に確定させたほうが、順序として無理がありません。

指針は事業主が講ずべき措置を定めたものであり、日本語研修の実施方法や到達水準を定めるものではありません。どの水準までの日本語を業務上必要とするかは、各社が業務内容から判断する必要があります。

2026年10月と2027年4月に適用日がある

直近の改正である令和8年5月29日厚生労働省告示第227号には、段階的な適用期日が定められています。附則の記載は次のとおりです。

規定適用日根拠
第一条の規定令和8年6月14日出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律(令和6年法律第59号)の施行の日
第二条の規定令和8年10月1日同附則に定める日
本則(上記以外)令和9年4月1日出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)の施行の日

令和9年4月1日は育成就労制度の施行日にあたります。受け入れ体制を設計する際は、この日をまたぐかどうかで確認すべき条文が変わる可能性があります。改正で具体的にどの文言が変わるかは告示の新旧対照によって確認してください。本記事では附則に記載された適用日のみを示しています。

出典:同指針 附則(令和8年5月29日厚生労働省告示第227号)(確認日 2026年9月1日)。

よくあるご質問

指針に従わなかった場合、罰則はありますか。

この指針は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第7条に基づく告示で、事業主が講ずべき措置を定めたものです。指針そのものに罰則規定は置かれていません。ただし指針が引用する労働基準法、労働安全衛生法、入管法などの個別法にはそれぞれの定めがあります。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。

「努めること」と書かれていれば、やらなくてよいということですか。

努力義務は、達成できなかったこと自体を直ちに違法とするものではありませんが、措置を講じない理由の説明を求められる場面はあります。また指針は行政指導の根拠として用いられ、公共職業安定所による助言・指導が行われることがあります。「やらなくてよい」と読むのは実務上おすすめできません。

安全衛生教育を母国語で行う必要がありますか。

指針は「母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと」と定めており、手段は母国語に限定されていません。視聴覚教材や図解も例示されています。求められているのは手段ではなく、本人が内容を理解できる状態です。

日本語研修を実施すれば、指針の日本語に関する項目を満たしたことになりますか。

指針の第四 三 2 は労働災害防止の指示等を理解できるようにするための日本語、第四 五 2 は生活支援としての日本語学習の機会を、それぞれ別の条項で定めています。研修の内容がどちらに対応するかは、カリキュラムの中身によります。研修の実施そのものが自動的に条項を満たすという関係ではありません。

この指針は育成就労の受け入れ要件とは違うものですか。

異なります。本指針は外国人労働者一般を対象に事業主が講ずべき措置を定めた告示です。育成就労制度における受け入れ機関の要件は入管法および関係法令に別途定められており、日本語教育に関する要件もそちらで規定されます。制度ごとに確認すべき条文が異なります。

受け入れ体制のなかでの日本語研修をご相談ください

安全衛生教育の理解確認と、業務上必要な日本語の水準は別の設計になります。貴社の業務内容をうかがったうえで、どちらにどこまで必要かを整理してご提案します。

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