育成就労ガイド
JLPTとJFT-Basic、育成就労と特定技能1号で求められる日本語のレベル
育成就労では、就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験に合格すること、又はこれに相当する認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することが求められ、さらに基本的に3年間を通じて「日本語教育の参照枠」A2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが目標とされています。JFT-Basicは2026年7月までA2.2(A2)に達しているかどうかだけを測るテストでしたが、2026年8月からA1とA2.1も測定するようになり、総合得点10点~250点のうち145点~174点がA1、175点~199点がA2.1、200点~250点がA2.2(A2)と判定されます。判定は水準ごとに用途が分かれていて、A1は在留資格「育成就労」「留学」の申請に、A2.1は主として育成就労制度で本人が転籍しようとする際の手続きに、A2.2(A2)は在留資格「特定技能1号」の申請に使います。
執筆:United World 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)/公開 2026年9月11日
出典:独立行政法人国際交流基金「JFT-Basicとは」、同「よくある質問」、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、同「特定技能制度に関するQ&A」(確認日 2026年9月1日)。制度・判定区分・分野別運用方針は改正されます。手続きの前に必ず出典先の最新版をご確認ください。
2026年8月に、JFT-Basicの判定区分そのものが変わった
比較記事の多くは「JFT-BasicはA2に達しているかを測るテスト」と説明しています。その説明は、2026年7月までのものです。
※JFT-Basicは、2026年7月までA2.2(A2)のみを測るテストとして実施していましたが、2026年8月からA1、A2.1も測定できるようになりました。
国際交流基金「JFT-Basicとは」
同じページには、判定の区切りが得点で示されています。
10点~250点の得点範囲において、145点~174点はA1、175点~199点はA2.1、200点~250点はA2.2(A2)と判定されます。
国際交流基金「JFT-Basicとは」
得点と判定、そしてその判定が使える手続き
| 総合得点 | 判定 | その判定が使える手続き |
|---|---|---|
| 145点未満 | 判定結果は表示されず「*」で表示される | 本記事の確認範囲では、この場合の用途は示されていません |
| 145点~174点 | A1 | 在留資格「育成就労」「留学」の申請 |
| 175点~199点 | A2.1 | 主として育成就労制度で本人が転籍しようとする際の手続き |
| 200点~250点 | A2.2(A2) | 在留資格「特定技能1号」の申請 |
このテストは、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)、JF日本語教育スタンダード、日本語教育の参照枠における、A1、A2.1、A2.2(A2)に達しているかどうかを判定するものだと国際交流基金は説明しています。得点そのものではなく、どの水準に達したかという判定が手続きに使われる、という構造です。
採用や在籍者の書類を見るときに効いてくる点がひとつあります。国際交流基金は「判定結果通知書にA1やA2.1の判定が記載される2026年8月以降のテストを受験してください」と案内しています。つまり、2026年7月以前に受験した通知書からは、A2.2(A2)に達したかどうかしか読み取れません。A1やA2.1の判定が必要な手続きのために、改めて受験が必要になる場合があります。
育成就労で日本語が問われるのは、一度ではない
育成就労制度について、出入国在留管理庁は次のように説明しています。
就労開始前までに求められる要件として、日本語能力A1相当以上の試験に合格すること又はこれに相当する認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することを求めています。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
そして、制度全体の目標は別に置かれています。
育成就労の目標として、日本語能力については、基本的に、3年間を通じて日本語教育参照枠A2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが求められます。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
さらに、本人の意向による転籍にも要件があります。
転籍を希望する育成就労外国人が分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能及び日本語の能力を修得していること。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
三つの場面を並べる
| 場面 | 求められること | JFT-Basicの対応する判定 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | 日本語能力A1相当以上の試験に合格、又は認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講 | A1(145点~174点)の判定が在留資格「育成就労」の申請に使える |
| 本人の意向による転籍 | 分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能及び日本語の能力を修得していること | A2.1(175点~199点)は主としてこの手続きに使うと案内されている |
| 3年間を通じた目標 | 基本的に「日本語教育の参照枠」A2相当の日本語能力を修得し、試験に合格すること | A2.2(A2)(200点~250点) |
人事の実務から見たときに重要なのは、入社時点の一点だけを見ていると転籍の段階で手続きが止まるということです。A1で就労を開始した人が、本人の意向で転籍しようとする場面では、分野別運用方針が定める水準を満たしている必要があります。その水準が分野ごとに定められる以上、自社の分野の運用方針を読まないかぎり、必要な水準は本記事からは分かりません。
特定技能1号では、使える試験が限られている
育成就労の先に特定技能1号への移行を見ている企業は、要求水準がもう一段上がることを前提に計画を立てることになります。
その他の特定産業分野における「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」においては、特定技能1号の日本語能力水準の評価は、「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上(自動車運送業分野のうちタクシー又はバス区分及び鉄道分野のうち運輸係員区分については、N3以上))」、そのほか「日本語教育の参照枠」のA2相当以上(自動車運送業分野のうちタクシー又はバス区分及び鉄道分野のうち運輸係員区分については、B1相当以上)の水準と認められるものの合格のみと定められています
出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
ここで見落とされがちなのが、三つ目の「そのほか『日本語教育の参照枠』のA2相当以上の水準と認められるもの」という受け皿です。同じQ&Aは、続けてこう書いています。
これも令和7年12月1日時点では、A2相当以上又はB1相当以上の水準として認められた日本語試験はありません。
出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
結果として残るのは二つの試験
| 区分 | 日本語能力試験(JLPT) | 「日本語教育の参照枠」の水準 |
|---|---|---|
| その他の特定産業分野 | N4以上 | A2相当以上 |
| 自動車運送業分野のうちタクシー又はバス区分 | N3以上 | B1相当以上 |
| 鉄道分野のうち運輸係員区分 | N3以上 | B1相当以上 |
令和7年12月1日時点で参照枠の水準として認められた試験が存在しない以上、実務上、特定技能1号の日本語要件の確認は国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)か日本語能力試験(JLPT)の結果で行うことになります。「A2相当の研修を受けた」という事実だけでは要件の証明になりません。証明になるのは試験の合格・判定です。
なお、JLPTの実施回数・出題形式・結果通知の時期、そして各級の判定方法については、本記事では一次情報に当たっていないため扱いません。受験計画を組む際は主催者の公式情報をご確認ください。
「在留資格の要件を満たす水準」と「現場で指示が通る水準」は、別の話として扱う
ここまで整理してきたのは、すべて在留資格の申請と手続きに使える証明の話です。国際交流基金は、JFT-Basicの判定結果について「在留資格『特定技能1号』、『育成就労』、『留学』の申請に必要な日本語能力の証明のために使えます」と説明しています。判定の用途はそこに紐づいており、特定の業務を遂行できることを保証するものだとは書かれていません。
比較記事の多くも「試験の級と実務能力は違う」とは書きます。ただし結論が「面接で確認を」で止まることが多い。面接で確認できるのは、面接の場で起きる言語運用だけです。安全に関わる指示、報告のタイミング、聞き返しができるかどうかといった、業務のなかでしか現れない運用は、入社後の設計の側に置くしかありません。定着と日本語の議論がここから始まります。
講習100時間ルートについての注意
就労開始前の要件には、試験合格のほかに講習のルートがあります。ただし、その中身は限定されています。
育成就労制度の入国後講習においては、日本語教育機関認定法に基づき認定を受けた認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することを定めています。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
United World は認定日本語教育機関ではありません。したがって当社の研修が、この入国後講習の100時間として算入されることはありません。研修会社を選ぶ際も、「育成就労対応」と書かれた案内が、認定日本語教育機関の「就労」課程としての講習を指しているのか、要件を満たした後の業務日本語の研修を指しているのかは、分けて確認する必要があります。
本記事で確認していないこと
分野別運用方針が定める分野ごとの具体的な水準、JFT-Basicの実施回数や受験料、JLPTの各級の判定方法、そして個別の在留資格申請が受理されるかどうかの判断は、本記事では確認していません。また、制度上の要件を自社の状況が満たすかどうかという判断は、法令の解釈に関わるもので、弁護士の領分です。分からないことを推測で埋めると、水準の数字だけが合っていて手続きが通らない計画になります。
よくあるご質問
JFT-BasicとJLPTは、育成就労と特定技能1号でどう使い分けますか。
JFT-Basicの判定結果は在留資格「特定技能1号」「育成就労」「留学」の申請に必要な日本語能力の証明として使えると国際交流基金が案内しており、A1は育成就労・留学の申請、A2.1は主として育成就労制度で本人が転籍しようとする際の手続き、A2.2(A2)は特定技能1号の申請と用途が分かれています。JLPTについては、特定技能1号の日本語能力水準の評価として分野別運用方針に「日本語能力試験(N4以上)」が定められています。
2026年7月以前に受験したJFT-Basicの結果は、A1の証明になりますか。
国際交流基金は、判定結果通知書にA1やA2.1の判定が記載される2026年8月以降のテストを受験してください、と案内しています。2026年7月までのJFT-BasicはA2.2(A2)に達しているかどうかだけを測るテストとして実施されていたため、それ以前の通知書からA1やA2.1の判定を読み取ることはできません。手元の通知書の受験時期を先に確認してください。
試験に合格していない人を、就労開始前の要件に乗せる方法はありますか。
出入国在留管理庁は、就労開始前までに求められる要件として、日本語能力A1相当以上の試験に合格すること又はこれに相当する認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することを求めている、と説明しています。ただしこの講習は日本語教育機関認定法に基づき認定を受けた認定日本語教育機関の課程として実施することが定められており、どの研修でも代わりになるわけではありません。
当社の日本語研修は、育成就労の入国後講習100時間に算入できますか。
できません。育成就労制度の入国後講習は、日本語教育機関認定法に基づき認定を受けた認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することと定められています。United World は認定日本語教育機関ではないため、当社の研修がこの100時間の要件を満たすことはありません。当社がお手伝いできるのは、要件とは別に必要になる業務上の日本語の部分です。
「日本語教育の参照枠」のA2相当と認められた試験はありますか。
出入国在留管理庁は特定技能制度のQ&Aで、令和7年12月1日時点ではA2相当以上又はB1相当以上の水準として認められた日本語試験はない、としています。そのため特定技能1号の日本語要件の確認は、実務上は国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験の結果で行うことになります。研修の受講歴そのものは、この要件の証明にはなりません。
分野によって、求められる日本語の水準は違いますか。
特定技能1号では、自動車運送業分野のうちタクシー又はバス区分と、鉄道分野のうち運輸係員区分について日本語能力試験N3以上(参照枠ではB1相当以上)と定められており、その他の分野のN4以上より高い水準になっています。育成就労の転籍の要件も、分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能及び日本語の能力とされているため、自社の分野の運用方針を確認する必要があります。