育成就労ガイド
改正外国人雇用管理指針に規定された日本語学習支援の努力義務——3段階の適用日と企業が確認すること
改正外国人雇用管理指針は、外国人労働者及びその家族に対する日本語学習の機会の提供等の支援に努めることと、日本語能力に配慮した教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるよう努めることを、事業主の努力義務として規定しました。この2項目は3段階の適用日のうち最初の段階に属し、厚生労働省のリーフレットでは令和8年(2026年)6月14日適用の欄に掲げられています。企業がまず確認するのは次の2点です。日本語学習の機会を誰に、何を、いつ提供したか。研修や安全衛生教育で日本語能力にどう配慮したか。その両方を、後から説明できる形で残しているかどうかです。
執筆:United World 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)/公開 2026年9月24日
出典:厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する告示案概要」、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「外国人雇用管理指針改正の主なポイント」、厚生労働省「外国人の雇用」、e-Gov法令検索「日本語教育の推進に関する法律」(確認日 2026年9月1日)。指針と制度は改正されます。対応を決める前に、出典先の最新版をご確認ください。
3段階の適用日と、日本語学習支援が属する段階
外国人雇用管理指針は、令和8年5月29日の厚生労働省告示第227号で改正されました。改正の背景は二つあります。一つは令和8年1月23日の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」、もう一つは令和9年4月1日に改正法(令和6年法律第60号)が施行され、育成就労制度が創設される予定であることです。
改正の内容は一度に適用されるのではありません。告示案概要が示した適用期日は次のとおりです。
適用期日:令和9年4月1日((1)、(2)(ⅰ)、(3)(ⅰ)及び(ⅱ)並びに(4)(ⅰ)及び(ⅲ)の規定は令和8年6月 14 日、(2)(ⅱ)の規定は令和8年 10 月1日)(予定)
厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する告示案概要」(労働政策審議会職業安定分科会(第224回)資料2-2、令和8年5月15日)
日本語学習支援は(3)(ⅰ)、日本語能力に配慮した教育訓練は(3)(ⅱ)です。どちらも最初の段階に入っています。告示案概要の時点では「予定」でしたが、告示後に出されたリーフレットも、日本語学習支援の項目を令和8年6月14日適用の欄に掲げています。
| 適用日 | この記事の出典で確認できる主な項目 | 出典 |
|---|---|---|
| 令和8年(2026年)6月14日 | 外国人労働者とその家族への日本語学習の機会の提供等の支援((3)(ⅰ))。日本語能力に配慮した教育訓練の実施その他必要な措置((3)(ⅱ))。このほか(1)、(2)(ⅰ)、(4)(ⅰ)、(4)(ⅲ) | 告示案概要、リーフレット |
| 令和8年(2026年)10月1日 | (2)(ⅱ)の規定。リーフレットによると、この日から、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときの労働条件明示事項に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨が加わる | 告示案概要、リーフレット |
| 令和9年(2027年)4月1日 | 改正全体の適用期日。育成就労外国人が目標とする技能及び日本語の能力を修得できるよう取り組むこと ほか | 告示案概要、リーフレット |
育成就労制度が始まる令和9年4月1日より前に、日本語学習支援の項目はすでに適用されています。「育成就労が始まってから準備すればよい」という理解は、この適用日の順序と合いません。
条項の根拠:日本語教育推進法第六条と労働施策総合推進法第8条
告示案概要によると、指針そのものの根拠条項は労働施策総合推進法第8条です。日本語学習支援の項目は、日本語教育の推進に関する法律(令和元年法律第48号)の規定に基づいて規定されています。その法律の第六条は次のとおりです。
外国人等を雇用する事業主は、基本理念にのっとり、国又は地方公共団体が実施する日本語教育の推進に関する施策に協力するとともに、その雇用する外国人等及びその家族に対する日本語学習(日本語を習得するための学習をいう。以下同じ。)の機会の提供その他の日本語学習に関する支援に努めるものとする。
日本語教育の推進に関する法律 第六条(e-Gov法令検索)
条文は、事業主に二つのことを求めています。
- 国または地方公共団体が実施する日本語教育の施策に協力すること
- 雇用する外国人等とその家族に、日本語学習の機会の提供その他の支援をするよう努めること
改正指針は、法律が定めるこの事業主の努力を、雇用管理の指針の中で事業主の責務として規定しました。
「努力義務」の法的な扱いについて
この記事で確認した出典には、努力義務を果たさなかった場合に罰則があるのか、行政指導の対象になるのかは書かれていません。法的な評価は弁護士の領分です。個別の判断は、管轄の都道府県労働局または弁護士に確認してください。
育成就労が始まる2027年4月1日の項目との関係
日本語に関わる項目は、適用日の違う二つの層に分かれています。
| 層 | 対象 | 内容 | 適用日 |
|---|---|---|---|
| 日本語学習支援・日本語能力に配慮した教育訓練 | 外国人労働者(日本語学習支援はその家族を含む) | 日本語学習の機会の提供等の支援に努める。日本語能力に配慮した教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるよう努める | 令和8年6月14日 |
| 育成就労外国人に関する項目 | 育成就労外国人 | 目標とする技能及び日本語の能力を修得できるよう取り組む | 令和9年4月1日 |
一つ目の層は、育成就労外国人を受け入れるかどうかに関係なく、外国人労働者を雇用する事業主に向けた項目です。二つ目の層は、育成就労制度で受け入れる外国人に限った項目で、育成就労制度の創設と同じ日に適用されます。
育成就労制度で求められる日本語能力の水準や試験・講習の要件は、指針とは別に出入国在留管理庁の資料で定められています。育成就労制度と企業の義務で整理しています。社内研修や外部の日本語研修が育成就労制度の要件に当たるかどうかは、所管の行政機関に確認してください。United World は認定日本語教育機関ではありません。
努力義務に対して企業が確認・記録すること
この記事で確認した出典には、努力義務に対してどの程度の取り組みをすればよいのかの基準も、記録の様式も書かれていません。基準の解釈は管轄の労働局に確認してください。以下は、指針の二つの項目それぞれについて、取り組みを社内外に説明するための整理です。
日本語学習の機会の提供等の支援((3)(ⅰ))
- 対象者:在籍する外国人労働者の一覧。家族については、本人が同意した範囲で、支援の案内を希望するかどうか。
- 提供した機会の内容:社内の日本語研修、外部講座の案内、教材の提供など、何を用意したか。
- 条件:受講を勤務時間内と勤務時間外のどちらで扱うか。費用を誰が負担するか。
- 案内の日付と方法:いつ、どの言語で、どの手段(書面・説明会・社内掲示など)で伝えたか。
- 本人の希望と受講状況:希望の有無、受講の実績、受講しなかった場合の理由。
- 国・地方公共団体の施策との関係:日本語教育推進法第六条は施策への協力も定めています。地域の日本語教室など、自治体の施策を案内したかどうか。
日本語能力に配慮した教育訓練((3)(ⅱ))
リーフレットは、この項目の目的を「在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能となるよう」と説明しています。確認する場面は、日本語の授業に限りません。
| 場面 | 確認すること | 残す記録の例 |
|---|---|---|
| 入社時・定期の研修 | 説明に使う言語や日本語の難しさが受講者に合っているか。理解をどう確かめたか | 使用した資料の版、理解確認の方法と結果 |
| OJT | 指導者が使う言葉や、指示の復唱・確認の手順が決まっているか | 指導者への説明内容、確認の手順書 |
| 業務マニュアル | ふりがな、やさしい日本語への言い換え、母語の併記など、読める形になっているか | 改訂履歴、どの配慮をどの版で入れたか |
| 安全衛生教育 | 危険な作業や禁止事項を、本人が理解したことをどう確かめたか | 実施日、使用言語、理解確認の方法と結果 |
日本語の授業を用意していても、研修やマニュアルが日本語能力に配慮していなければ、(3)(ⅱ)の説明はできません。反対に、授業をまだ用意していなくても、現場の教育訓練で行っている配慮は記録できます。この二つは別々に確認してください。
家族への支援をどう考えるか
日本語教育推進法第六条も改正指針も、支援の対象に「その家族」を含めています。ただし、この記事で確認した出典には、家族に対して具体的に何をすればよいかは書かれていません。
次のような取り組みは、条文の文言に沿って整理できます。
- 施策の情報を届ける:居住する自治体が実施している日本語教室や相談窓口の情報を、本人を通じて家族に届ける。条文にある「国又は地方公共団体が実施する日本語教育の推進に関する施策に協力する」ことにもつながります。
- 社内の機会を開くかどうか検討する:社内の日本語講座や教材を家族も利用できるようにするか、検討した結果を残す。
- 本人の意思を確認する:家族の状況は個人の情報です。支援の案内を希望するかどうかを本人に確認し、希望の範囲で行う。
地域の日本語教育の施策の内容は自治体ごとに違います。居住地の自治体の担当窓口に確認してください。
よくある質問
日本語学習支援の努力義務はいつから適用されていますか。
厚生労働省のリーフレットは、外国人労働者の日本語学習支援等の項目を令和8年(2026年)6月14日適用の欄に掲げています。育成就労制度が始まる令和9年4月1日を待たずに、すでに適用されている項目です。
努力義務を果たさないと罰則はありますか。
改正外国人雇用管理指針の日本語学習支援は「努めること」を定めた規定です。罰則や行政指導の扱いは、この記事で確認した出典には書かれていません。個別の判断は、管轄の都道府県労働局または弁護士に確認してください。
家族への日本語学習支援は何をすればよいですか。
日本語教育推進法第六条と改正指針は、家族への日本語学習の機会の提供等の支援に努めることを定めていますが、具体的な方法は示していません。本人が同意した範囲で自治体の日本語教室などの施策を案内し、その記録を残すことから始められます。
育成就労外国人を受け入れない企業にも関係がありますか。
関係があります。日本語学習支援と日本語能力に配慮した教育訓練は、外国人労働者を雇用する事業主に向けた項目です。育成就労外国人に限った項目は、これとは別に令和9年4月1日に適用されます。
社内の日本語研修を行えば育成就労制度の日本語要件を満たせますか。
改正指針の努力義務と、育成就労制度で求められる日本語能力の要件は別のものです。社内研修や外部研修が育成就労制度の要件に当たるかどうかは、出入国在留管理庁の資料で確認し、所管の窓口に問い合わせてください。United World は認定日本語教育機関ではありません。