選び方ガイド
法人向け日本語研修:オンラインと講師派遣の比較を助成金・労働時間・育成就労の義務から整理する
オンラインか講師派遣かという形そのものは、導入の可否を決める軸になりません。人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給要領は、OFF-JTの実施方法を通学制・同時双方向型の通信訓練・eラーニング・通信制に分け、通学制と同時双方向型の通信訓練には1コースあたり10時間以上の実訓練時間数を求める一方、eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等には賃金助成を支給しないとしています。比較すべきなのは配信の手段ではなく、受講中に講師へ質疑応答ができる同時双方向の形かどうか、研修時間を労働時間として扱うかどうか、そして育成就労制度の日本語講習義務と切り分けられているかどうかの三点です。
執筆:United World 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)/公開 2026年9月2日
出典:厚生労働省「12 人材開発支援助成金(1)人材育成支援コース」支給要領(令和8年8月3日以降に提出される職業訓練実施計画届に適用)、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」(令和8年6月)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(いずれも確認日 2026年9月1日)。
「移動費が不要」「対面は緊張感がある」では決まらない
形態の比較としてよく挙げられるのは、移動費や集合の手間、対面のほうが集中しやすいといった運用感覚です。どれも実感としては正しいのですが、社内の決裁を通す材料にはなりません。同じ研修を受けても、実施方法の区分と時間の扱いが変われば、使える助成金も、給与計算も、制度上の義務履行の可否も変わるためです。
意思決定が実際に分岐するのは、次の三点です。
- 助成金の実施方法の区分。オンラインか対面かではなく、同時双方向かどうかで要件が変わります。
- 研修時間を労働時間として扱うかどうか。この判断が先にないと、賃金助成の対象時間も、給与の支払い方も決まりません。
- 育成就労制度の日本語講習義務との切り分け。制度上の講習と、業務で必要な日本語の研修は別のものです。
以下、この三点を一次情報の記述に沿って順に見ていきます。
助成金は「オンラインか派遣か」ではなく「同時双方向かどうか」で分かれる
人材開発支援助成金(人材育成支援コース・人材育成訓練)の支給要領は、訓練の実施方法を通学制、同時双方向型の通信訓練、eラーニング、通信制のいずれかであることと定め、区分ごとに時間の要件と支給対象労働者の要件を置いています。
| 実施方法 | 時間の要件 | 賃金助成 | 支給対象労働者の要件 |
|---|---|---|---|
| 通学制 | 1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上 | 対象(所定労働時間内に実施された訓練のみ) | 受講時間数が実訓練時間数の8割以上 |
| 同時双方向型の通信訓練 | 1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上 | 対象(所定労働時間内に実施された訓練のみ) | 受講時間数が実訓練時間数の8割以上 |
| eラーニングによる訓練等 | 1コースあたりの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上 | 支給しない | 訓練期間中に訓練等を修了した者 |
| 通信制による訓練等 | 1コースあたりの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上 | 支給しない | 訓練期間中に訓練等を修了した者 |
出典:同支給要領(実施方法・実訓練時間数・支給対象労働者・賃金助成の各項)(確認日 2026年9月1日)。表は要件の一部を抜き出したものです。適用の可否は原文と労働局の判断によります。
「オンライン=eラーニング」ではない
要領は、遠隔で行う訓練のうち一定のものを「同時双方向型の通信訓練」として、eラーニングや通信制とは別に定義しています。
OFF-JT又はOJTにおいて、情報通信技術を活用した遠隔講習であって、一方的な講義ではなく、現受講中に講師に対して質疑応答が行えるなど、同時かつ双方向的に実施される形態のものをいう。
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」支給要領 用語の定義「同時双方向型の通信訓練」
この定義に当てはまる形であれば、オンラインであっても時間要件と受講率の要件は通学制と同じ枠で扱われます。逆に、録画教材を各自で視聴する形に寄せると、eラーニングによる訓練等または通信制による訓練等として、賃金助成が支給されず、要件も「訓練期間中に修了したこと」に変わります。「オンラインだから助成金が使えない」でも「オンラインなら手軽」でもなく、講師と受講者が同時に接続して質疑応答が成立する設計かどうかが分岐点です。
対面であっても、区分は自動的には決まらない
要領は通学制を、eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等、同時双方向型の通信訓練および定額制サービスによる訓練を除く訓練等であって、教育訓練機関に通学し対面で受講することと定義しています。一方で提出書類の定めには、通学制または同時双方向型の通信訓練で実施場所が申請事業主の事業所・営業所等と同一の所在地であるときに、見取図・レイアウト図の写し等の提出を求める項目が置かれています。つまり自社の場所で行う対面研修が要領上どの区分に当たるかは、実施形態を決めた時点で自明にはならず、職業訓練実施計画届の提出前に労働局へ確認すべき事項です。ここを後回しにすると、研修そのものは成立しても支給申請の段階で組み直しになります。
研修時間を労働時間として扱うかを、形態より先に決める
厚生労働省のリーフレットは、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当するとしています。研修・教育訓練については、次のように整理されています。
研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。/研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」
同リーフレットは、使用者が指定する社外研修について休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修を、労働時間に該当する事例として挙げています。オンラインで実施すること自体が、この判断を変えるわけではありません。
助成金の側から見ると
支給要領では、OFF-JTの賃金助成は訓練対象者の所定労働時間内において実施された訓練等のみを対象とし、所定労働時間外に実施した時間は助成額の算定から除かれます(所定休日をあらかじめ振り替えて実施した場合を除く)。経費助成は所定労働時間内に行われたか否かを問わず対象になりますが、業務上の義務として労働時間中に実施されるものに限るとされています。さらに、業務上の義務として実施されるものではなく労働者が自発的に行うものは、助成対象とならないOFF-JTの実施方法として表に掲げられています。
要領は、eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等であっても、支給対象訓練は業務上義務付けられ労働時間に該当するものとなるため、当該訓練中に賃金を支払うことが必要としています。「オンラインなので各自が空いた時間に進めてください」という運用は、この二つの側面から成立しません。自発的な学習として設計すれば助成対象から外れ、業務として指示すれば労働時間の管理と賃金の支払いが必要になります。
決めたことを書面にしておく
同リーフレットは、労働時間に該当しないとする場合には、上司がその研修・教育訓練を行うよう指示しておらず、開始時点で本来業務やその準備・後処理が終了していることをあらかじめ労使で確認しておくこと、通常の勤務場所とは異なる場所で行うことや外形的に見分けられる服装で行うことなどを定め、こうした取扱いの実施手続を書面により明確化することが望ましいとしています。個別の事案がどちらに当たるかは法的な判断であり、弁護士の領分です。就業規則や研修案内の文言を変える前に、顧問弁護士にご確認ください。
出典:同リーフレット、同支給要領(賃金助成・経費助成の取扱い、表2)(確認日 2026年9月1日)。
場所・移動時間・講師旅費という、形態ごとに固有の条件
実施方法の区分と労働時間の扱いが決まると、残るのは場所と移動の問題です。ここは講師派遣とオンラインで論点が入れ替わります。
就労の場では実施できない
支給要領は、営業中の生産ラインまたは就労の場で行われるものを、事務所、営業店舗、工場、関連企業(取引先を含む)の勤務先など場所の種類を問わず、助成対象とならない実施方法として掲げています(eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等を除く)。講師を招いても、稼働中の現場で作業に沿って教える形はこの区分に入ります。加えて、通学制または同時双方向型の通信訓練を申請事業主の事業所と同一の所在地で実施する場合は、通常の事業活動・営業活動と区切られている場所で訓練を実施することが分かる見取図・レイアウト図等の写しの提出が求められます。会議室を押さえるという運用上の手当てが、そのまま支給要件の証拠になります。
移動時間は実訓練時間数に入らない
カリキュラムの一部に移動時間がある場合、その時間は実訓練時間数に含めず、賃金助成の対象としないと定められています。1コースあたり10時間以上という要件を、移動を含めた拘束時間で満たしたつもりになると不足が生じます。オンラインを選べばこの論点は消えますが、代わりに受講場所が就労の場になっていないことを自社で担保する必要が出てきます。
部外講師の旅費が助成対象になる範囲は限られている
事業内訓練で部外講師を招く場合の旅費は、部外講師が勤務先または自宅から会場までに要した旅費として経費助成の対象になり得ます。ただし国内招聘の場合、対象は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府および兵庫県以外に所在する事業所が道県外から招聘する部外講師に限られ、助成対象となる額は一の職業訓練実施計画当たり5万円が上限です(海外からの招聘の場合は15万円)。首都圏や関西の事業所が講師派遣を選ぶ場合、旅費は助成の枠外で扱われることになります。
出典:同支給要領(表2、提出書類、実訓練時間数、部外講師旅費の各項)(確認日 2026年9月1日)。
育成就労制度の日本語講習は、社内研修の形態選択とは別の話
育成就労制度では、入国後講習において、日本語教育機関認定法に基づき認定を受けた認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することが定められています。この講習はA1相当の日本語能力の試験に合格している場合は受講不要とされ、講習の一部を本国において行うことも可能とされています。さらに、日本語能力の計画的な育成のため、育成就労実施者は育成就労の期間である3年間の間に、同課程のA2相当の講習を100時間以上受講する機会を提供する必要があるとされています。施行後当分の間は、登録日本語教員による一定の要件を満たした授業で代替できるとされています。
形態については、出入国在留管理庁のQ&Aが次のように述べています。
日本語講習の履修に際しては、オンラインによる受講も可能ですが、双方向で同時にコミュニケーションを取れるものであることなど、一定の要件を満たす必要があります。
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q65
労働時間の扱いも整理されています。育成就労実施者はA2目標講習を受講できるよう必要な措置を講じなければならないとされる一方、当該講習を受講している時間を労働時間として扱うことを義務付けるものではないとされています。費用については、育成就労実施者または監理支援機関において、費用の負担を含め日本語能力向上のために必要な措置を取ることとされています。
当社の研修が制度上の講習に当たるとは申し上げられません
United World は認定日本語教育機関ではありません。したがって、当社の研修が育成就労制度の日本語講習の要件を満たすとは申し上げられず、当社の講師の登録日本語教員としての登録状況についても、ここでお示しできる確認済みの情報はありません。制度上の義務は、認定日本語教育機関等による講習として履行するものと理解したうえで、当社が扱えるのは業務で必要な日本語の部分だという切り分けでお考えください。制度への当てはめの最終的な判断は、監理支援機関および弁護士にご確認ください。
なお、特定技能については、本記事で確認した一次情報の範囲に研修の実施形態を定めた記載を見つけていないため、この記事では扱っていません。
出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q64・Q65・Q66・Q69(確認日 2026年9月1日)。
決める順序
形態から入ると、後から要件に合わせて組み直すことになります。順序を逆にすると、比較の材料が先に揃います。
1. 目的を業務の場面で書く
支給要領は、趣味教養を身に付けることを目的とするものを助成対象とならないOFF-JTとして挙げ、その例に「日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習」を掲げています。「日本語力の底上げ」ではなく、朝礼での報告、指示の復唱、報告書の記入といった業務の場面でカリキュラムを書けるかどうかが、形態の議論より先に来ます。
2. 労働時間として扱うかを決める
業務上の義務として実施するのか、自由参加とするのか。ここが決まらないと、賃金助成の対象時間も、就業規則上の扱いも決まりません。決めた内容は書面で明確化しておきます。
3. 助成金を使うなら、実施方法の区分を先に確定する
同時双方向型の通信訓練として設計するのか、通学制として設計するのか、eラーニングとして設計するのか。区分によって時間の要件、受講率の要件、賃金助成の有無が変わります。自社の場所で実施する場合の区分と提出書類は、計画届の提出前に労働局へ確認します。
4. 場所を確認する
営業中の生産ラインや就労の場は使えません。自社の会議室で実施する場合は、通常の事業活動と区切られていることが分かる図面を用意します。オンラインの場合も、受講者が業務の席で片手間に受ける形にならないよう、場所と時間を確保します。
助成金の要件は 日本語研修と助成金 に、育成就労制度で企業に課される義務は 育成就労と企業の義務 にまとめています。
この整理の限界
ここで参照した支給要領は、令和8年8月3日以降に提出される職業訓練実施計画届に適用されるものです。要領は改定されるため、実際の申請にあたっては最新版と、管轄の労働局の判断をご確認ください。本記事は要件の所在を示すもので、個別の訓練が支給対象になるかどうかを判断するものではありません。
また、当社の研修で何か月後にどの水準へ到達するか、これまでに何社が導入したかといった数値は、公表できる実績値がないため記載していません。形態ごとの費用についても、回数・人数・実施場所によって変わるため、金額の目安を一般論として示すことはしていません。
よくあるご質問
オンラインで実施しても人材開発支援助成金は使えますか。
実施方法の区分によって扱いが変わります。受講中に講師へ質疑応答が行えるなど同時かつ双方向的に実施される遠隔講習は「同時双方向型の通信訓練」に当たり、通学制と同じく1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上であること、受講時間数が実訓練時間数の8割以上であることが求められます。録画教材の視聴が中心のeラーニングによる訓練等や通信制による訓練等は、標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上で、訓練期間中の修了が要件となり、賃金助成は支給されません。
研修の時間は労働時間として扱う必要がありますか。
業務上義務づけられていない自由参加の研修であれば労働時間に該当しないとされていますが、不参加が就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合は労働時間に該当するとされています。厚生労働省のリーフレットは、あらかじめ労使で取扱いを話し合って確認し、実施手続を書面により明確化することが望ましいとしています。個別の当てはめは法的な判断になるため、顧問弁護士にご確認ください。
講師派遣は交通費の分だけ不利になりませんか。
助成金の側では、事業内訓練で部外講師を招く場合の旅費が経費助成の対象になり得ますが、国内招聘では東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府および兵庫県以外に所在する事業所が道県外から招聘する部外講師に限られ、一の職業訓練実施計画当たり5万円が上限です。またカリキュラムの一部に移動時間がある場合、その時間は実訓練時間数に含めず、賃金助成の対象にもなりません。実際の負担は実施場所と回数で変わるため、条件を伺ったうえで個別にご説明しています。
作業をしながら現場で教える形は助成対象になりますか。
営業中の生産ラインまたは就労の場で行われるものは、事務所、営業店舗、工場、関連企業(取引先を含む)の勤務先など場所の種類を問わず、助成対象とならない実施方法として掲げられています(eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等を除く)。自社の会議室で実施する場合も、通学制または同時双方向型の通信訓練で実施場所が事業所・営業所等と同一の所在地であるときは、通常の事業活動・営業活動と区切られている場所であることが分かる見取図・レイアウト図の写し等の提出が求められます。
育成就労の日本語講習を、当社の法人研修で代えられますか。
United World は認定日本語教育機関ではないため、当社の研修が制度上の講習の要件を満たすとは申し上げられません。育成就労制度では、入国後講習において認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することが定められ、育成就労の期間である3年間の間に同課程のA2相当の講習を100時間以上受講する機会を提供する必要があるとされています。施行後当分の間は登録日本語教員による一定の要件を満たした授業で代替できるとされていますが、当社の講師の登録状況についてここでお示しできる確認済みの情報はありません。
特定技能で受け入れている場合はどう考えればよいですか。
本記事で確認した一次情報の範囲には、特定技能について日本語研修の実施形態を定めた記載を見つけていないため、この記事では扱っていません。分からないことを推測で補うと計画の前提そのものが崩れるため、受け入れ機関に求められる支援の内容については、出入国在留管理庁の資料と登録支援機関にご確認ください。助成金と労働時間に関する部分は、在留資格にかかわらず同じ要件を読むことになります。