JLPT・JFT-Basic

JLPTは、総合点が足りていても落ちます

日本語能力試験の合否には条件が二つあります。総合得点が合格点以上であること、そして各得点区分の得点が基準点以上であること。ひとつでも基準点に届かない区分があれば、総合得点が合格点を超えていても不合格です。さらにJLPTの点数は正答数の合計ではなく、解答のパターンから項目応答理論で算出される尺度得点なので、「あと何問で受かる」という数え方は仕組みと合っていません。

執筆:United World Nihongo 編集部|公開日:2026年9月5日|出典:日本語能力試験公式ウェブサイト「得点区分・合否判定・結果通知」、国際交流基金・日本国際教育支援協会「尺度得点について」、「CEFRレベル参考表示」|確認日:2026年9月5日

条件は二つ、同時に満たす必要があります

公式サイトはこう書いています。

合格するためには、①総合得点が合格に必要な点(=合格点)以上であること、②各得点区分の得点が、区分ごとに設けられた合格に必要な点(=基準点)以上であること、の二つが必要です。

日本語能力試験公式ウェブサイト「得点区分・合否判定・結果通知」(確認日:2026年9月5日)

レベル得点区分各区分の範囲基準点合格点(総合)
N1言語知識/読解/聴解各0〜60点各19点100点
N2言語知識/読解/聴解各0〜60点各19点90点
N3言語知識/読解/聴解各0〜60点各19点95点
N4言語知識・読解/聴解0〜120点/0〜60点38点/19点90点
N5言語知識・読解/聴解0〜120点/0〜60点38点/19点80点

どのレベルも、総合得点の満点は180点です。N1〜N3は60点の区分が3つ、N4とN5は120点と60点の区分が2つで、合計は同じになります。

落ち方は、だいたい決まっています

たとえばN2を受けて、言語知識40点・読解33点・聴解18点だったとします。総合得点は91点で、合格点の90点を超えています。それでも不合格です。聴解が基準点の19点に1点届いていないためです。

この数字は仕組みを説明するために作った例で、実際の統計ではありません。ただ、形としてはよくあります。読解と語彙を伸ばして総合点を押し上げても、聴解が基準点の前で止まっていれば、そこだけで不合格が決まります。逆に言えば、総合点をあと数点積み増す勉強より、いちばん低い区分を基準点の上に出す勉強のほうが、合否に直結します。

この場合、成績書類にCEFRレベルは表示されず「*」が表示されます。どの区分が足りなかったかは得点区分別の得点として出るので、次にどこを練習するかは結果が教えてくれます。

点数は、正答数ではありません

ここが誤解されやすいところです。JLPTの点数は、正解した問題の配点を足した「素点」ではなく、「尺度得点」です。公式資料は算出のしかたをこう説明しています。

尺度得点は、どの問題にどのように解答しているか(正答か誤答か)、すなわち「解答のパターン」によって数理的に決定されます。

国際交流基金・日本国際教育支援協会「尺度得点について」(確認日:2026年9月5日)

算出は項目応答理論(Item Response Theory)という統計的テスト理論に基づいており、正答数に基づいた素点の算出法とは全く異なる、と同じ資料に書かれています。その結果として、次のことが起きます。

  • 正答数や解答パターンが違う二人が、同じ尺度得点になることがある
  • 正答数は同じでも、解答パターンが異なるために尺度得点が違うことがある

なぜこの方式なのかも書かれています。試験問題の難易度を回ごとに完全に一定に保つことは極めて困難なので、素点を使うと、同じ日本語能力の人でも受けた回によって点数が変わってしまう。尺度得点は難易度と独立に能力を数値化するため、いつ受けても同じ能力なら同じ点数が返る、という考え方です。

実務的な結論はひとつです。「あと2問で受かった」という数え方は、この試験の点数の作られ方と合っていません。過去問で正答数を数えるのは練習の管理としては有効ですが、合否の予測としては当てになりません。

N3の合格点が、N2より高いのはなぜか

表を見ると、N3の合格点は95点で、N2の90点より高くなっています。上のレベルのほうが合格点が低い、という奇妙な並びです。

これは、レベル同士で点数を比べられる前提が、そもそも置かれていないためです。尺度得点の資料が比較可能だと述べているのは、次の範囲に限られています。

同じレベルで同じ得点区分ならば、2つの異なる試験で算出された「尺度得点の差」を「日本語能力の差」として、試験の難易度から独立して解釈することが可能になります。

国際交流基金・日本国際教育支援協会「尺度得点について」(確認日:2026年9月5日)

つまり「同じレベルの、同じ区分」を、違う回のあいだで比べられるという話です。N2の90点とN3の95点を並べて難易を論じることは、この文が保証している範囲の外にあります。

N3の合格点がどう決まったかも、同じ資料が説明しています。新試験の合否判定水準は旧試験と整合するように設定され、旧試験の1級・2級・3級・4級に合格できる能力の人は、それぞれ新試験のN1・N2・N4・N5に合格できる能力を持つと解釈できる。そしてN3には旧試験に対応する級がなかったため、旧試験の2級と3級の合否判定水準を統計的に分析し、そのあいだにN3の合格点が収まるように設定された、と書かれています。

能力の位置としては、N3はN2とN4のあいだにあります。95という数字がN2の90より大きいことは、そこから独立した、別の目盛りの上の出来事です。

では、次に何をするか

  • 成績書類の区分別得点を見る。合否より先に、どの区分が基準点にどれだけ届いていないかを確認します。合否は結果ですが、区分別得点は次の設計図です。
  • いちばん低い区分から手をつける。総合点を上げる勉強と、基準点を越える勉強は別です。合否を決めているのは後者です。
  • 正答数ではなく、できる場面で測る。点数が解答パターンから決まる以上、「何問正解したか」は自分の現在地の目安として弱い指標です。
  • 話す・書くは別に練習する。JLPTの測定範囲は言語知識・読解・聴解で、産出活動(話す・書く)・やりとり等の能力は含まれていません。合格しても、そこは測られていません。

よくあるご質問

基準点に1点だけ届かなかった場合、救済はありますか。

公式サイトが示している合否の条件は、総合得点が合格点以上であることと、各得点区分の得点が基準点以上であることの二つで、基準点に届かない区分がある場合の例外的な取り扱いについての記載は、確認した範囲では見当たりません。1点でも届かなければ不合格として扱われる、と読むのが素直です。次回に向けては、その区分を基準点の上に出すことが最優先になります。

過去問で何点取れれば合格できますか。

過去問の正答数から合否を見積もることはできません。日本語能力試験の点数は正答数を足した素点ではなく、解答のパターンから項目応答理論に基づいて算出される尺度得点だからです。公式資料には、正答数が同じでも解答パターンが異なれば尺度得点が異なる場合があると明記されています。過去問は、どの区分が弱いかを見るためには有効ですが、点数の予測には使えないと考えてください。

N3とN2、どちらを受けるべきか点数から判断できますか。

点数の大小からは判断できません。尺度得点の公式資料が比較可能としているのは、同じレベルの同じ得点区分について、異なる回の得点を比べる場合です。N3の合格点95点とN2の合格点90点は別のレベルの数字なので、並べて難易を論じることはできません。判断は、必要としている証明の水準と、いま得点区分のどこが弱いかから決めるほうが確実です。

合格すれば、日本語で働けると考えてよいですか。

試験が測っている範囲を確認してください。日本語能力試験の公式サイトは、測定範囲が言語知識・読解・聴解であり、産出活動(話す・書く)・やりとり等の能力は含まれていないと明記しています。会議で意見を述べる、電話で状況を説明する、メールを書くといった場面の力は、この試験では測られていません。職場で困っているのがその種類の場面であれば、試験対策とは別の練習が必要になります。

まずは体験レッスンで現在地を確認します

1回1,000円(税込)。どの場面で言葉に詰まるのかを一緒に確認します。そのあと必ず続ける必要はありません。

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